平成21年 6月定例会 (2009.6.16)

知的財産権問題


◯三十三番(原竹 岩海君)登壇
 皆さん、こんにちは。民主・県政クラブの原竹でございます。事前通告に従いまして質問を行いたいと存じます。
 近年、アジアを中心に経済成長や経済のグローバル化が進展する中で、商標権の侵害を初め知的財産権をめぐるさまざまな問題が大きく報道されております。商標権とは知的財産権の一種で工業所有権の一つと言われているようであります。商標権は商品やサービス等について登録した商標を独占的また排他的に使用できる権限とされ、主なものとして、文字すなわち商品やサービスの名称、デザイン、記号、コーラの瓶などの立体物、ロゴなどがこれに該当するようであります。知的財産権の侵害問題におきまして、特に中国では模倣品や偽装品と思われる品物が市場に堂々と出回り、最近では正規のメーカーの経営に大きな影響を与えていると言われておりまして、日本企業もその例外ではないようであります。県内の事業者からも、昔の中国市場は、にせものと知りながら価格が安いとの理由で売買されていたが、最近では著しく技術が発達し、一見本物と識別がつかないものが市場に出回り、一般の商品として大量に売買されているのが現状であり、到底WTOに加盟をしている国とは思えないとの声も聞かれるところであります。にせものや模倣品は、生産の現場や販売先を摘発して商品を押収することで一定の成果が上がると言われておりますが、商標権の侵害問題は複雑で解決が大変難しいと言われております。そこで、商標権に関する問題について質問します。
 最近、中国や台湾を中心に、我が国の都道府県名を初め市町村や地域名、農産物などの有名ブランド名に関する商標権の侵害が大きな問題となっているようであります。その一つの実例として、平成十九年、世界最大の米消費国である中国で、日本産の米の販売が始まりました。中国で販売された米は、日本で有名なコシヒカリとひとめぼれでしたが、それらの商品はどういうことかブランド名ではなく、新潟県産や宮城県産と表記されただけでありました。その理由として、いずれの名称も中国の一つの企業により既に商標登録をされていたので、ブランド名を明記することができなかったという事実であります。また、台湾では、讃岐という地域ブランド名が商標登録をされたり、地域名では青森を初め、秋田、福島、長野、静岡など実に二十七の府県の名称が商標として出願中のものや、既に登録をされているものがあると経済産業省が公表したところであります。このように、他人が有している権限を第三者が権利出願することを冒認登録と言うようであります。日本国内では、みんなが共有をしたり認識をし合っている地域名やブランド名を外国で一方的に商標登録をされた結果、日本からそれらの国に輸出して販売をしようとしましても、商行為が迅速にできない現状が多く報告されていることに大変危惧をされるところであります。これらの問題を踏まえまして、知事に次の五点について質問します。
 まず一点目として、中国と台湾では、我が国の多くの地域名や農産物のブランド名が一方的に商標登録をされております。このような、中国や台湾での現状を知事はどのように認識しておられるのかお伺いします。
 二点目に、本県がみずから現在までに、イチゴのあまおうのように商標登録をされたり、申請中のものがあるのか。あるとすれば、その内容について具体的にお示しください。
 三点目に、本県はあまおうなど農産物を中国や台湾に対して輸出を推進し、販売額は年々伸びております。日本政府は、中国と先般日中ハイレベル経済対話を実施し、知的財産権の保護に関する具体的な協議に入ったようでありますが、これらの問題の解決には、まだ多くの時間がかかりそうであります。したがって、県はこの間に自力であまおうなどのようにブランド名を守り、諸外国へ打って出なければならない時期でもあります。中国や台湾における商標侵害の状況とあわせて、知事の今後の対応についてお尋ねします。
 また、農産物以外で、地域などのブランド名に関して商標権の侵害に関する企業等の影響につきましてもお答えください。
 四点目として、県内の市町村や企業から商標登録に関することや、商標権侵害に関してどのような相談が寄せられ、これらの問題に具体的にどのように対応されているのかお伺いします。また、県はもとより、県下の市町村に対して、今後どのように指導していかれるのかお伺いします。
 最後に、五点目として諸外国に対する商標登録の手続について、中小企業におかれましては大変難しく費用負担も負荷が大きいと思われます。これから世界に対して進出していこうとする本県の地場産業を支援するという観点から、一定の経費を助成するべきと考えますが、知事の所見をお伺いしまして、質問を終わります。

◯議長(今林 久君)
 麻生知事。

◯知事(麻生 渡君)登壇
 商標登録についてでございますが、中国や台湾そのほかの商標法を持っておる国々の制度では、日本と同じように先願主義、つまり早く出願をした方に対してその審査結果に基づきまして商標権を与えるというやり方をとっております。したがいまして、今おっしゃられたように、考えられるいろんな名前について商標権を設定しておくというような行動をとるケースが多々見られるわけであります。このようなものに対しましては、一つは一般的にもう既に広く知られておるというような定着した、例えば外国の地名、これは商標として認めない、あるいは商標登録をしましても一定期間一向に使っていないというものにつきましては抹消するというような対抗の制度も同時につくられているわけであります。そういうものを使いながら商標というものについてせめぎ合いをやっていくというのが現状でございます。
 農産物につきましての商標登録の現状でありますけれども、本県の場合には、特にあまおうの輸出を広く進めておりまして、これにつきましては韓国、中国、台湾、香港でそれぞれ商標登録を行いました。また、もう一つ一般的に福岡県の農産物の共通ブランドといたしましてまる福マークをつけているわけでありますが、これにつきましても香港を初め八カ国で登録済みあるいは現在出願中である、そのような状況でございます。
 農産物の商標につきましての侵害の状況でございますが、現時点までの状況では、あまおうなどの商標権が侵害されたというようなことについての我々に対する訴えなり、相談はございません。今後侵害されるということは十分考えられるわけでありますけれども、その際には、やはり的確な法的対抗手段を検討、実施するということが基本になると考えております。
 一般的に福岡県の企業が海外におきまして商標権の侵害状況はどうなっておるかということであります。本県の場合には、北九州市、福岡市、久留米市、三つに知的所有権センターを設けております。ここでは企業に対しまして商標に関する登録、あるいはいろんな防衛のための相談等々に応じているわけであります。現在のところ、このような知的所有権センターにおきまして、商標権に関しましては出願の手続の相談は多くあるわけでありますけれども、今のところ侵害を受けておる、これをどうすべきかということについての相談事例はまだないという状況であります。
 ただ、他県の場合には既に商標侵害の問題が起こっているという事例もございます。そのような状況にだんだんなってまいりましたから、今後我々の企業に対しましても商標侵害を中心に知的財産権の確保と保護について積極的に体制をつくり、活用するように促していきたいと思います。
 外国での商標登録に対する支援でございますけれども、これは今後特に中小企業の皆さんが海外に進出する際に、このような権利をきちっと確立するということは、非常に重要な条件の一つになるわけでございます。したがいまして、本県の中では各種の補助制度を設けておりますが、その中でも外国での商標登録に対します経費につきまして助成の対象にいたしておる状況でございます。

◯議長(今林 久君)
 原竹岩海君。

◯三十三番(原竹 岩海君)登壇
 本件に関しましては、知事は専門家でございますので、釈迦に何とかということわざがございますが、しかしながら日本政府や関係団体からのさまざまな報告がございましたので、あえて私は、思い切って本件を質問とさせていただいたわけであります。
 意見でございますけれども、私は、知事がこういったことに対しての専門家ということでございますので、商標権等に関しては、福岡県に企業が来ればしっかりとサポートをやる。こういったところで福岡県から中国とか世界に対してどんどん商標権等を心配しなくても輸出ができる、こういったリーダー県になってほしいという観点から質問に立ったわけであります。
 要望でございます。平成十九年六月に経済産業省が、中国における知的財産権に関する侵害及び被害状況の実態調査を実施し、日系企業等が本件に関して多くの影響が出ていることに警鐘が鳴らされたところであります。その中でも、商標権に関する侵害報告は四千六十三件と最も多くございまして、問題の深刻化と対応の複雑さには驚きであります。一つの事例でございますけれども、商標権問題で、有名な企業でございますオリンパスが、中国の企業から訴えられまして、結果的にオリンパスが敗訴しました。中国の元でございますけれども、二十五万人民元の賠償金の支払い命令がオリンパスのほうにしっかり出されたわけでございましてショックであります。また、先ほど申し上げました青森の件でございますが、これは問題の解決のために五年かかっております。この間の経済的損失は大きいということが発表されたところであります。そしてジェトロは、将来、将来についてでありますが、中国で販売する予定のある企業や、農産物の輸出を計画している地方自治体は、早期に登録したほうがいいという忠告を行っております。このことから、福岡県行政におかれましては、県はもとより県下の市町村や企業に対しまして、本件に関してさらなる周知をされますことを要望しまして、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。